2019年会社法改正:役員の報酬決定方針を株主総会で決める義務

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日本の会社では取締役のインセンティブをどうやって
高めるかが課題となっています。

一般社会から見ると、取締役は高額報酬を取って
いるように見える役員ですが、その責任はかなり重いです。
会社法は、重い責任がある取締役のインセンティブを
上げて、なり手を増やしたい背景があります。

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もくじ

取締役は責任が重い

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取締役は高額報酬をもらっていると考えられます。
一般から見ればその通りで、うらやましい限りなのですが、
会社法の判例研究をすると取締役は
会社の様々なことで訴えられることが多いです。

特に第三者に対して会社が問題を起こしたときに、
当人の他に会社の組織体制を構築しているかの
問題を問われます。

平たくいうと、あまり関与していなくても
部下の不祥事で責任を取って辞めることがあります。

昇進したくないという会社員が増えたと同様に
取締役のなり手を見つけるのも少し難しいです。
本人の能力や人柄を据えると同時に
役員の責任の重さがあっても役員になってもらえるように
報酬制度の改善をしたいというのが、今回の
会社法改正における役員報酬の改正につながっています。

金銭以外の報酬、つまり株式などの報酬を与えて
そのインセンティブを高めたいというのが改正の趣旨です。

合わせて、一定の会社では取締役の報酬分配方針を開示するよう
改正がありました。こちらの方がなじみやすいため、
決定方針の開示について説明していきます。

会社法改正:報酬等の決定方針

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今回の会社法改正において、株主総会で
取締役の個別の報酬内容を決定する方針を
決めるように変更されます。

具体的な文言はこちらです。
(説明は後述するので、読みたくない方は読み飛ばしてください。)

次に掲げる株式会社の取締役会は,取締役(監査等委員である取締役を除く。以下(1)において同じ。)の報酬等(第361条第1項に規定する報酬等をいう。以下1において同じ。)の内容として定款又は株主総会の決議による同項各号に掲げる事項についての定めがある場合には,当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項(以下1において「報酬等の決定方針」という。)を決定しなければならないものとする。ただし,取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは,この限りでないものとする。

ア 監査役会設置会社(公開会社であり,かつ,大会社であるものに限 る。)であって,金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行 する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければな らないもの
イ 監査等委員会設置会社

株主は、取締役個別の報酬額に興味がないのが元々の考え方

今回の改正では、取締役の個別の報酬決定方針を
株主総会が決めることとなっております。

しかし、元々は個別の取締役の報酬は
株主総会の関知するところではありません。

株主と会社が利益相反をするところは、
会社から無駄に取締役に報酬が払われること、
会社の富が流出することでした。

だから、個別の決定方針に踏み込んだ今回の改正は
なぜなのだろうと、会社法を知っている人は感じるのです。

改正の背景

株主総会が取締役の報酬の総額しか決定しないと、
その配分の基準が密室になってしまうとの批判がありました。

つまり、代表取締役の好き嫌いで、報酬が決定されて
しまっているという批判が出るのです。

細かい範囲はともかくとして、個人別の報酬額を定める際の
決定方針を法律で決めさせるでその対応をして、
取締役にやる気を出してもらうことが今回の目的です。

実際に、そこまでインセンティブが上がると
言えないですが、その一歩と評価できるでしょう。

ちなみに、日産のゴーンさんの事件があって
今回の改正があったようにも見えますが、
そうではありません。

確かに、ゴーンさんの事件が出てきて、改正の
趣旨が少しずれた感はあります。でも、改正の
草案が出たのは、その事件後です。

 

株主総会での報酬決定方針の説明義務は削除

株主総会で報酬決定方針の説明義務は削除されて通過しております。

コーポレートガバナンスや、中小企業で適用している人の負担を考慮したのが理由と考えられます。

方針は株主が決めないと決まらない上に、説明するというのも
順番が逆になってしまいますし。

もちろん株主総会で、質問をすれば回答義務があります。
その意味で、新たな法律を作らなくても、
法解釈で対応が可能とも言えますが、改正が行われました。

会社法の改正は背景を知っていると
案外と面白く俯瞰できます。

法的に反映するまで2年程度ありますので、
気長でも見ていくと、先取りして説明できますよ。

 

【編集後記】
Kinseyさんに論文校正コンサルティングの
ご紹介をしていただきました。
ありがとうございます。

あわせて読みたい

Kinseyさんはビジネス目線に重きを置きながら、ハラスメントの問題と
その対策を論じる面白い取り組みをされています。

少し前の版を公開してくれていたので、興味のある方は
ブログ見てみてください。Kinseyさんは多分
ハラスメント関連のセミナーの企画ができます。
社労士事務所さんなど、お声がけしても面白いかも。
以前その道の方から受けたセミナーより個別事例に
踏み込んでいて理解しやすかったです。

ハラスメントとそれ以外の垣根をはっきりさせることは
会社組織の活性化にも必要な点だと考えます。

【運動記録】
ジョギングO ストレッチO 筋トレO サプリO

【一日一新】
チョコティラミスシュー

【子育日記(2歳)】
一緒に遊んでる途中
急に「おとうさんとあそびたかったの」と
言われました。

萌えますね。

その後、気がすむまで一緒に遊びました。

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