事業売却や組織再編に依らない損保ジャパンの人員削減の法的秀逸さ

一人事務所を大阪で営む税理士のブログ | 事業売却や組織再編に依らない損保ジャパンの人員削減の法的秀逸さ
損保ジャパンの人員削減の話が
話題になりました。
損保ジャパン4000人削減で最悪の労働搾取モデルが完成。業務自動化で年収250万減へ
6月末、損保ジャパンがIT活用などにより、2万6,000人いる全従業員のほぼ15%にあたる4,000人を削減し、買収で手に入れたワタミの介護の人材に回すことが発表されました。
この手法はかなり秀逸なのですが、
どこがいいか初見でちょっとわかりにくいです。

類似の効果をもたらす「事業単位売り」と
「組織再編」とを引き合いに出して、
どのあたりが秀逸なのかを考えてみます。

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もくじ

事業単位売りの場合は従業員との個別交渉必要

事業単位売りをする場合、
この対象となる社員とは個別交渉が
必要となっています。

その売却によって売却先に
転籍になることから、労働者との
話し合いが個別の必要とされています。

労働者側にとっては、会社と必ず交渉を
してから転籍の結果にいきつくので親切な
設計ですね。

しかし、会社側からすればかなり手間です。
従業員が一人しかいないのにその事業を
単位ごと売却しようということは少ないでしょう。

数百人や数千人という規模で売却しようと
する場合にいちいちの時間がかかるのは
売却に不向きです。

組織再編の場合は労働者との契約承継が問題になりがち

組織再編で切り分けて新設法人の子会社にした場合、
個々の同意は不要です。
これは上記の事業売却のような時間的な手間を
省くように組織再編が制度設計されているからです。

しかし、当初考えられていたよりも
労働者の保護の手順も大切にされています。
決められた手順を踏まないと組織再編によって
自社から別の会社に労働者を移したつもりでも
裁判所によって否定される結果になることも。

労働者保護の判例がしっかり出ているため、
契約を勝手に他社に移して労働者の
労働条件を下げるような動きはできないのです。

今回の介護への異動

そういった意味で、今回の手法は秀逸でした。

上記のように、自社に勤めている労働者を
自社から切り離して労働条件を下げることをしていません。

したのは、介護の会社を自社にぶら下げて
その中で社員を異動させたことです。

社内での異動については、雇用の継続を
しているので認められることが多いです。

過剰な労働力を抱える企業にとって
常套手段になるのではないかというくらい、
新しいやり方です。

介護労働力の確保

記事では従業員の賃金をカットしての
削減効果をうたっています。

でも、介護事業の需要の伸びを考えれば、
労働力をしっかり確保すれば需要が伸びる
業界にしっかりと参入できています。

また、高齢者を対象とする介護と保険の
相乗も狙えるのではないでしょうか。

労働者寄りに見ると賃金カットのための
動きと判断する人も多いでしょう。

ただ、人員整理のための事業購入よりも
介護分野への参入の目線が経営者に強いのではないでしょうか。
無駄な事業分野を買って自社にぶら下げるのですから。

今後として

介護のような労働力を必要とする分野の購入と、
労働力が余っている会社との相乗を狙った
今回の動きは、かなり斬新なものでした。

今回は問題はないとされているようですが、
労働関係の法律が後追いして、
いつか何かしらの規制がされる可能性は
あるやもしれません。

一方で、(大企業優遇とは言われながらも)
会社の自由な制度を整えることは、
社会の富の増加に役立つ会社法の考え方もあります。

この綱引きがどう決着するかはもう少し先の
話になるでしょう。

【編集後記】
少し天気が持ち直したので、
子どもとお出かけです。

【運動記録】
ジョギング雨 ストレッチO 筋トレO サプリO

【一日一新】
それいけ!アンパンマン きらめけ!アイスの国のバニラ姫

【子育日記(2歳)】
アンパンマンを見に。

子ども向けの映画のせいか、上映中も
比較的明るくしてくれていました。

もらったマラカスも劇中で使えて
楽しそうでした。

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