Uber Eats の法律的な課題点を考えてみる

Uber Eats02

Uber Eatsに法的問題はあるのでしょうか。
ギグワークスと呼ばれるこの分野は、これから検討される分野でしょう。

実際にギグワークスに関連して運営会社、働いている人、レストラン、そして消費者の3者の立場からそれぞれの法的検討を行なってみることにします。

検討結果は、近接した労働者、運営会社の形態、消費者保護の立場と似た性質がるにも関わらず法的なしばりが薄いという実質と公平性に問題が出ています。

じゃあ、公平性を担保するように法改正をするべきかといえば、経済活性化を阻害する面もあるでしょう。
検討することで、法学の研究や実態の課題点の把握として役立ちます。

uber eats

*注文した画面にて

もくじ

4者の全体像の把握

Uber Eatsの登場人物は、Uber、パートナー(下請け配送者)、レストラン、注文者です。
その関係はこのように整理されます。Uber Eats02

点線はお金の流れです。

注文に使うとシンプルなのですが、登場人物を整理していくと、委託も絡み複雑ですね。

Uber Eatsからパートナーへのマニュアルには、従業員でないことを強調した文章がたくさんあります。
弁護士にも相当相談していることが読めます。
すぐさま裁判で何かを

パートナーが配送物を捨てた責任をUberが取るべきか?

Uber Eatsで一時期話題になったのは、パートナー(配送業者)がレストランから受け取ったものを捨ててしまった場合です。
このときに、Uber Eatsに責任はあるのでしょうか。
責任を問うには法的根拠が必要です。
適用関係が考えられる会社法での使用者責任を検討してみます。

使用者責任

使用者責任は「雇用主→従業員」の関係において、従業員の責任を雇用主が負う必要をいいます。

よく出てくる例示は、就業中の従業員が車で誰かを轢いてしまったときの責任を、雇用主が負うものです。
就業中において起こったことは、その雇用主の指揮命令下にあります。だから、責任があるとなります。
また、登場者の中で責任を負う能力がある者を突き詰めると、雇用主が妥当という判断の積み重ねもあり、使用者責任があります。

Uber Eatsとパートナーが雇用関係にあれば、使用者責任をUber Eatsが負うこととなりますので、パートナーが配送物を捨ててしまえばUber Eatsが責任を負う(例えば弁済する)ことになります。

Uber Eatsとパートナーは雇用関係にない

Uber Eatsとパートナーは雇用関係にないことは、マニュアルにも強調されています。

会社法よりも労働基準法や労働契約法の関連から雇用関係になっているかを考えてみるのが妥当です。
しかし、雇用関係は見いだせません。

雇用関係で重要視されるのは、従属性、拘束性です。
Uber Eatsとのマニュアルや募集で強調しているのは、

好きな時に、好きなだけ

時間の制限やシフトなし。
アプリをオンラインにするだけ、好きな時に働けます。
他のアルバイトとの掛け持ちもOK!

であり、従属性や拘束性はないとの判断に至ります。

労働に近いサービスを提供する場合に問題になることが多いです。
労働法はもともと工場労働者を念頭において発達してきており、サービス業や今のような遠隔就業は、突き詰めるとグレーなところです。

雇用関係は見いだせない=Uber Eatsに使用者責任がないが…

Uber Eatsには、結局使用者責任がないことになります。

しかし、法律の適用関係が見いだせないような新しい分野であるため、現行法が対応できていない概念が裏にある可能性を否定できません。

概念検討は、今後の課題でしょう。

また、会社法関係では、運送業法も検討するところです。
Uber Eatsは、その表示を背中の緑に掲げて委託で配送を受けています。
裁判官の判定が微妙な判例がありますので、少しだけ検討に値する法律適用でしょう。

労働契約法と労働組合法

労働契約法では労働者にならないです。しかし、労働組合法では労働者に入ります。

就業関係が労働者でないものでも、労働組合として団体交渉ができる範ちゅうに入ってきます。
プロ野球選手は、労働者ではないですが、労働組合法では労働者に分類され団体交渉が可能です。

労働契約上の労働者になるかは、労働者保護を国がどう考えるかが問題でしょう。

工場労働者ばかりだった時代からの変遷で、今は労働者とサービス業を行う自営業者(いわゆるフリーランス)の垣根がとても低いです。
新型肺炎による休業補償で、フリーランスへの補償が貸付だったことに不満の声が聞かれました。
政府が悪いというよりも、国の労働者に対する保護の考え方に政府が従うと、労働者とフリーランスを厳密に分けることになります。

だからこそ金銭支給ができず、融資にとどまったのでしょう。

カリフォルニアではUber Eatsのパートナーが労働者認定されたニュースがありました。

WIRED.jp
一人事務所を大阪で営む税理士のブログ | Uber Eats の法律的な課題点を考えてみる
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労働者認定する国がありますので、検討に値するでしょう。

しかし、一足飛びに労働者認定はされません。
別の国は別の法律体系の整合性をとっています。
その中の一部の法律だけを見て、是非を語れません。

隣の家は、「おこづかいが月100万円だ」ということから、「うちの家も月100万円にしろ」と言っているようなものです。
別の国が認めたから認めろでは、単なる論理飛躍です。

労働に対する考え方の国際協調において改善することも見られますが、国際労働機関(ILO)での協調がうまくいかなかった経緯があります。
すぐに何かしらがまとまりはしないでしょう。

租税法関連

税金の関係では、「税の補足をどうするか」「所得区分」「Uber Eats本体の課税」辺りが課題でしょう。

税の補足は中間業者からの報告を得ることで解決がはかられています。
Uber Eatsのような中間業者に報告書の提出義務が課される方向で議論がされています。

所得区分は、詳述すると長いので浅い議論ですが、税理士さんに聞けば「事業所得と雑所得のどちらか」と答えられるのが一般的です。
ただ、もう少し突っ込めば、法学的な何かは出てくる可能性があります。

それよりもBEPS (Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)の観点の方が注目されるところです。
日本の消費税もかかっていませんし、Uber Eatsが日本に納税している状態でないでしょうし。
Amazonが法人税を払っていなかった時期の話題性も大きかったので。
国際協調をした話し合いが今後も続きます。
ただ、なかなか足並みはそろいません。
どこかに絶対的な基準があるのではなく、交渉とパワーバランスの結果で結論が出るから。
日本経済新聞
一人事務所を大阪で営む税理士のブログ | Uber Eats の法律的な課題点を考えてみる
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その他

保険についても考えるところですが、長さの関係から見送りました。

Uber Eatsで連続配送などをすると報奨金がももらえるため、そこそこ割のいい商売と認識している方が続けています。

一方的に搾取しているビジネスでもないのかと。

店舗ごとに見れば、単に店舗で待っているだけでは商売は厳しいです。
お店で待ったり並んだりするのが面倒な人向けのニーズもあるので、Uber Eatsのようなサービスは社会のニーズを一部満たすでしょう。

ギグワークは従事する者を自由にしたのか、しないのか

ギグワークは、労働者を労働者を自由にするのかは、今後の動向や研究を待つところです。

経済はちょうどいいところでなかなか止まりません。
労働者を労働者から開放するような収入源であると同時に、ギグワークへの依存を高めてしまうと結局頼る雇用主が変わっただけの関係が再構築されるに至ります。

まだ、語るべきことは多いですが、ギグワークへの法律関係に興味を持ってもらえたらうれしいです。

【編集後記】
映画の延期がされるものが増えてますね。
密室、不特定多数、と考えると映画館は移りやすいと考えるのが妥当で、運営会社さんらは難しい判断を迫られていることでしょう。

気にせず早く見に行けるような状態になってほしいです。

【運動記録】
ジョギングO ストレッチO 筋トレO サプリO

【一日一新】
チョコスティックドーナツ

【子育て日記(2歳)】
お風呂で人形のかくれんぼをしました。
まだ、単純なフェイントに引っかかってくれますが、少しずつ学習しているので勘が鋭くなってきてます。
笑かせるフェイントを日々考案してます。

もくじ