日本の「所得税法」は、英語では Income Tax Act と訳されます。
「Income Tax Law でもいいのでは?」と思う方も多いでしょう。実は、場面によっては “Income Tax Law” でも通じます。ただし、正式名称や条文引用では “Act” を使うのが正確です。
どこまで気にするべきでしょう。ここでは、Law・Act・Code の違いを整理しながら、その理由を説明します。
Lawとは何か ― 広い意味の「法」
Law は最も広い概念
- 法律一般
- 法制度全体
- 法分野
- 判例や通達を含む法体系
例:
- under Japanese law(日本法上)
- Japanese tax law(日本の税法体系)
したがって、
Income Tax Law
と言っても、「所得税に関する法制度」という意味では普通に通じます。
この言い方について、私もよくしますし、それについて、なにか細かな指摘をされたこともありません。
つまり、口語的な説明や一般的な文章では問題ありません。
ただし、これは正式な法律名ではないという点が重要です。
Actとは何か ― 個別の制定法
Act は議会(国会)が制定した個々の法律の正式名称です。
日本法の英訳を見ると、ほとんどが Act になっています。
例(法務省データベースより):
- Design Act(意匠法)
- Companies Act(会社法)
- Patent Act(特許法)
- Income Tax Act(所得税法)
- Corporation Tax Act(法人税法)
- Labor Standards Act(労働基準法)
つまり、日本の「○○法」は原則として Actです。
条文引用をする場合は:
Article 36 of the Income Tax Act
と書きます。
Article 36 of the Income Tax Law
とは通常書きません。
Act は「具体的な法令そのもの」を指す言葉です。
Statuteとは何か
Statute は「制定法」という意味で、Act とほぼ同じ範囲を指します。しかし、
- タイトルとしてはあまり使われない
- 説明用語として使われる
例:
This statute was enacted in 1965.
「所得税法は1965年に制定された制定法である」という説明には使えますが、
Income Tax Statute
とは通常言いません。
Codeとは何か ― 法典
Code は「法典」、つまり体系的に編纂された包括的法律です。
日本の例:
- Civil Code(民法)
- Commercial Code(商法)
- Penal Code(刑法)
これらは、分野全体を体系的にまとめた法典型立法です。
一方、税法は分野ごとに独立しています:
- Income Tax Act
- Corporation Tax Act
- Consumption Tax Act
- Local Tax Act
日本には「Tax Code」という包括法典は存在しません。
アメリカでは
- Internal Revenue Code(IRC)
という Code 型構造を採用していますが、日本はそうではありません。
IRCのCodeという言い方になんとなく違和感を覚える方もいるでしょう。
法体系の違いから来ていると理解しておきます。
なぜ「所得税法」は Act なのか
理由はシンプルです。
- 国会制定の個別法律である
- 法典(Code)ではない
- 正式英訳が Income Tax Act とされている
したがって、正式名称は:
Income Tax Act of Japan
になります。
実務上の使い分け
整理すると:
| 用語 | 意味 | 使いどころ |
|---|---|---|
| Law | 法制度・法分野 | 一般説明・口語 |
| Act | 個別制定法 | 正式名称・条文引用 |
| Code | 法典 | 民法・商法など |
結論:
- 口語説明なら Income Tax Law でも通じる
- 条文引用や正式文書では Income Tax Act
まとめ
「Income Tax Law」と言っても意味は通じます。
ただし、正確に法令を指すなら「Income Tax Act」が適切です。
英語の Law・Act・Code の違いを理解しておくと、
- 契約書英訳
- 税務メモ
- 条文引用
- 国際税務説明
の精度が一段上がります。
細かいようですが、専門家としての信頼性はこういう部分に現れます。
とはいっても、日本の税理士が、この区別を正確にしたところで、大切な課税判断の結果には影響が大きくないです。
ご相談に来る方は、法律に興味があるわけではなく、納税額や自分の義務の履行をきっちりしたいという目的があります。
細かなことにこだわるのは、専門家側の話です。そのことは、理解た上で進めましょう。
英語で相談をしている際にそれよりも重要なのは、瞬発的に所得税法と伝えて、条文の話なのか、採決の話なのか、税務署
