専門家でも判断が異なることがあります。
というか、非専門家の方に、別の税理士との判断と異なったと言われることが、まれにあります。
専門家同士で見れば、その取引や法令関連を正確に理解すれば、それほど違わない気もしますが、その理由について考えてみます。
異なって見える主な2つの理由
一般の方から見て、専門家の判断が異なって見えるという指摘はあまり当てにならないことが多いです。
以下の様な理由があるからです。
- 前提条件の説明が不十分
- 思い込みで聞いている
- 回答を理解しきっていない
それでも異なることはあるでしょう。
法律関連であれば、以下の2点が主な要因と考えます。
- 解釈・事実認定・評価の相違
- 価値観の相違
解釈・事実認定・評価の相違
自然科学とは異なるため、以下のところの解釈のズレが、結論の違いに影響している可能性があります。ただ、ここまで話す事案というのは、多くはないですし、専門家で分岐する議論までされないの方が多いのではと考えます。
- 事実整理の粒度や重み付け(実質判定、関連当事者性、支配関係の評価など)
- 法令・基本通達・質疑応答事例・裁決/判例の射程の取り方(保守 vs 積極)
- 会計処理の選択肢(見積り、引当、減損、収益認識の時点)と税務への反映
- 立証可能性
- 証拠化コストを踏まえたポジション取り
- 似た概念との線引き
法解釈の相違という言い方でもいいかもしれないですが、純粋な租税法の議論を行う場面は、ごくごく一部です。
論文を書いていても、そういうエッセンスに到達して議論するのは、ろ過した最後の一滴だけで、その前は事実を丁寧に積み重ねることの方が多いです。
価値観の相違
価値観の相違がもう一つの部分でしょう。
解釈の部分に混ぜ込んでもいいですが、自分から湧き出てくるものから来る相違と考えて、分けて記載をしてみています。
100点の会計処理を行うことが、理想です。しかし、修正の費用だったり時間の関係などを考えて、コンプライアンスとのバランスを実現可能な範囲でとることがあります。
ここに価値観の相違が現れます。
もっと言えば、リスク許容、納税者権利とコンプライアンスのバランス辺りでしょうか。
法律に従って判断するのが当然ではありますが、この辺りの考え方は個人差が出やすいので、専門家の判断の違いにつながります。
しかし、この点が議論の中心になることは少ないです。
ここまで到達する前に、申告が完了することが多いですし、価値観の相違を出す場面もかなり少ないです。
まとめとして
まれに言われる、専門家の意見の相違について、少し掘り下げました。
非専門家の人に指摘されるほど、専門家の意見にばらつきはないように感じます。
前提条件の共有がしっかりできていない場面も多いですし。
あるとすれば、きちんと議論が完了する点まで話し合いをしているかだったり、コンプライアンス意識をどこまで満たした処理を行うか、辺りかなと。
non-Japaneseの方と話すと、前提のすり合わせからすでに課題なことも多いですが。
指摘は真摯に受け止め、技術を磨きつつ、判断をしていってもらえればなと。
【編集後記】
依頼を受けて執筆中。
細かいところが気になり、参考文献を増やしています。
【子育て日記(息子8歳、息子4歳)】
体調不良もあり、一緒に仕事をしています。
合間に病院につれていき、想定よりも健康で安心しました。