「所得」「利益」「通達」「勘定」は、仏教用語から来ているものです。

会計や税務をしている方は通常よく出てくる言葉なので、その語源としてまとめてみます。
また、訳語の構造としては、語源というよりも翻訳方法がその使用の理由になっていますので、その点の説明も付け加えます。

 

もともとの意味:「所得」「利益」「通達」「勘定」

「所得」

所得は、般若心経で出てきますね。

以無所得故いむしょとくこ

の部分をみてもられれば、「所得」と入っています。
ただ、ここでは「無所得」ということの方を取り上げていまして、サンスクリット語のanupalabdhiなどの訳語とされます。

ものによって内容は少々変わりますが、般若心経では単純に得るものがないことを無所得としていると考えられます。
「空(くう)」について語ったものであることから、もっと言えば、無所得は、「(期待しても)思ったものは得られない」という意とされます。

とにかく、得るものという考えからは、税務で使われる所得と考え方が似ているとは言えます。

 

「利益」

利益は、仏教用語では「りやく」と読まれます。
ごりやくと表記した方がしっくりきますね。
神仏融合の関係から、初詣に行った際に、「ごりやく」があるようにお祈りをすることが多いはずです。

仏教用語としては、仏や菩薩の教えなどによって得られた恩恵のことを指しています。

 

「通達」

通達は、もともとは仏道の全てに通じていることを指します。
通は、「知り尽くす」という意味がありますね。
「食通」を考えると、食についてよく知っているということですから。

通達自体は、隅々まで滞りなく通じさせるという意味が入っています。

 

「勘定」

もともと空海が経典を教えるという意味で「勘定」を使ったとされます。
考えを定めることが原義で、平安時代以降に計算の意味が加わっています。

 

福沢諭吉『帳合之法』における「利益」

さて、福沢諭吉の『帳合之法』を参照すると、「利益」はGainの訳語とされているようです。
ここから損失(Loss)を差し引いて、正味利益(Net Gain)が出てくるとされます。

利益は、earnings、profit、incomeあたりの訳語として、
それほどの区別なく現在使用されていると考えれば、まあこんなところかとも考えられます。
福沢諭吉の当初の訳として、仏教用語が当てられていることが観察できます。

 

既存言語への訳語当て込みの2つの方法から

さて、これらの言葉の紹介として、以下の書を参考にしました。

ここでは「仏教に由来する言葉」としてご紹介した「利益」などの言葉をあげつらっています。

原義としては由来しているので間違いではないのですが、実際に由来しているとまでは言い難いところがあります。
借用して、その意味が広くなったという方が合っていると考えます。

これは、明治時代の訳語の方向性が2つに分かれたことから説明できます。
それは、既存の体系の言葉を訳語として当てるか、新しい体系の訳語を作るか、です。

例えば、杉田玄白らの『解体新書』でzenuwを「神経」と翻訳しています。
この翻訳においては、中国医学が入っていたので、「経絡」という言葉はあったはずです。
現代においてzenuwを経絡として訳するのは正確でないと考えるかもしれませんが、当時であれば一番近い訳語であったはずです。

zenuwを神経としたのは、新しい学問体系に、既存の知識体系でこびりついた余計な理論を結び付けないためと考えられます。

そうすると、仏教用語の「利益」などを会計や税務の言葉へあてがった際に、本当は、その仏教用語の理論背景をひっつけたかったわけではないことが伺いしれます。

言葉の生まれとしては、「仏教用語から来ている」と表現して正しいでしょうが、訳語があてがわれた背景を考えれば、どこまでこれらの会計・税務の用語が「仏教用語から来た」と言い切れないようにもみえます。

ただ、その発生が仏教用語であることには、たくさんの方の「へぇ」をさらえるかもしれません。
話のネタとして、どこかにとどめておくと楽しいかもしれません。

 

【編集後記】
雨の中のお散歩と買い物をしました。

【運動記録】
ストレッチ○ 筋トレ○ サプリ○

【子育て日記(3歳・0歳)】
子どもと雨の中をお散歩と買い物をしました。
わざわざ果敢に水たまりに入っていくのを横目で楽しみました。