ITと税務:情報源が少ない理由と私の感想

一人事務所を大阪で営む税理士のブログ | ITと税務:情報源が少ない理由と私の感想

IT関連、税務関連の講師としてお招きいただくときに、「ITと税務」という分野での情報源を聞かれたことがあります。あるいは、そういった方がよく読んでいる情報源がないかという質問です。

あるにはあるのですが、会計畑の雑誌から延長して特集されているケースが多く、期待されているような情報源ではないのかなと感じました。税務に関わっている人のバックグラウンドはたくさんありますが、法律家のバックグラウンドを濃く持っている方から見ると、実はITは法律の根幹の判断にそれほど影響を与えていないというのが私の見方です。

もくじ

税務(法律)からITを見るとはどういうことか

ITは新しい分野と言われながらも、それほど法律上、すぐに対応されていないということがあります。一般の人から見ると法律改定は遅いのかもしれません。

IT関連の技術が早いことや、法律も矢継ぎ早に適当に加えているわけではなく、専門家が一応の議論を経て制定することが多いです。法律ができるときに、一般に読まれていなくても、論文ではたくさん書評があります。法律の制定を慎重に行っているというのが一つの理由です。

法律というと、税務関連においても同様です。税務に影響を与えるIT関連のことは多いです。雑誌でも大きく宣伝がされるので、IT関連というのは、税務にも影響を与えていると考えられます。

しかし、法律の議論を見るとあまりITの要素というものを感じません。
これにはいくつか理由がありますが、一番大きな部分は、法律は法律の用語でしか語り得ないということです。「デジタル社会」という言葉も耳馴染みはあるでしょうが、取り出たされて法律に大々的載っているのは、2021年制定のデジタル社会形成基本法においてです。

新しい言葉や概念はできる限り要素に分解して、その分解した内容が既存の法律の考え方に当てはまるかどうかで法律解釈を行います。

その意味で、IT関連の用語を新たに法律体系に取り入れなくても、既存の解釈の範ちゅうを拡大することで法律対応をしていく考え方の方が主流です。

結果的に、ITについて、表象部分の現れであって、法律の解釈に影響を与えないことが多いと、法律家が判断している場面にしばしば出会います。

結果的に、「ITと税務を融合した情報源」の供給を減らす方向に動きます。

事例:プラットフォーム

プラットフォームという言葉もいまや馴染みが深いものです。プラットフォーマーということもあります。
GoogleやYahoo!のように、情報を集約して取引の契機になる情報サイトです。

これらの言葉もなかなか法律用語ごして出てきません。出てきたのも、経産省の省内資料が初期のものだったと記憶しています。じゃあ、プラットフォームが関わる法律解釈が全くなかったかというとそうではありません。

旧商法の仲立人の解釈を使ってこれらの解釈を深めていったというのが方針でした。

すでにある概念に相当する言葉に当てはめて、その上で過去の法律解釈と齟齬がないように判断を深めていくわけです。批判もあるかもしれません。しかし、過去の判断から乖離することを防ぐ効果もあります。

また、プラットフォームが仲立人よりも大規模にものごとを処理できるという点に関しては、あまりその影響を法律に取り込んでいないという感じをうけます。

穴だから、私の価値提供

法律解釈に至るまでに遅いというのは、そのとおりです。裁判所などでは既存の法律解釈の延長で処理をしている現状がよく見られますし、この紐づけをうまくするのが腕の見せどころでしょう。

しかし、一般の人には分かりにくいですし、ビジネスをしている人でも分かりにくいことがあります。

こういった分かりにくさをうまく判断し、法律的にどういうリスクがあるかを考えてみるというのは、現場に近い税理士として講師をするときに価値提供になると考えます。あまり提供ができていない部分です。だからこそ、私が提供するという意気込みを持っています。

企業内の研修、展示会のセミナーなどでご要望をいただくときも、こういったギャップを埋める立場をしっかりと持つようにしています。

スッキリ分かったと言ってもらえるのは、このあたりの意識を念頭においているからかなと考えています。執筆やセミナーなどのご用命をいただいたときに、意識しているポイントです。

もくじ