租税法の「課税要件」と「研究する際の融合分野俯瞰図」

カフェ

税金を課される際に納税者側が一番気にすることは、誰がいくら払うかということでしょう。
交換のような当人にとって売買をしていない場合でも課税されるようなことは、専門家にとっては当たり前でも、素人にとっては納得がいきにくいものです。

これは課税標準の問題でしょう。

納付側が納得できるように課税長側も理論的に整合性を取ることが、租税法では求められています。

誰がいくら納めるかを規定するものが、課税要件と呼ばれるものです。
今回は課税要件をまとめてみます。

また、租税法でよく現れる借用概念を振り返るとともに、税法研究をする際の他の分野との融合範囲を俯瞰してみます。

カフェ

*カフェにて

 

もくじ

税法が規定する課税要件

誰がいくら納めるかを規定するのが課税要件です。
納税義務の成立を決めるとでも言いましょうか。

課税要件とは

課税要件とは、次の5つです。

  1. 納税義務者
  2. 課税物件
  3. 課税物件の帰属
  4. 課税標準
  5. 税率

一つ一つみていきましょう。

 

納税義務者

法律で税金を納める義務がある人を納税義務者といいます。

納税義務者は、所得税や法人税では税金を負担する人と一致します。

一方で、消費税では、税金を負担するのは消費者でありますが、納税義務者は事業者です。
税金を納める人と負担する人(担税者)が分かれている税金です。

 

参考までに納税者は国税通則法では次のように定められています。

五 納税者 国税に関する法律の規定により国税(源泉徴収による国税を除く。)を納める義務がある者(国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)に規定する第二次納税義務者及び国税の保証人を除く。)及び源泉徴収による国税を徴収して国に納付しなければならない者をいう。

納税者は、納税義務者と担税者を合わせたような定義になっていますね。

 

課税物件

税金が課される対象となる物や行為をいいます。

 

課税物件の帰属

納税義務者と課税物件の関係を規定するものです。

誰に帰属(誰がその課税物件の納税義務者に該当)するかは、問題になりやすい論点です。
例えば所得税では、その人が単なる名義人か、本当の所有者かどうかを判別させる原則があります。

帰属は、誰が税金を払うべきか、根本にかかわる論点です。

 

所得税法 第十二条(実質所得者課税の原則)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

課税標準

課税物件から税額算出のために金額や価額を表したものを課税標準といいます。

消費税が身近で分かりやすいですね。
消費税率を掛ける額が課税標準です。

1万円の書籍を買えば、10,000円x税率=消費税額になります。

税率

課税標準に税率をかけて出た結果が、納める税金の額になります。

消費税の税率は8%。今後予定されているのは10%ですね。
所得税や法人税などは、別の率の設定があります。

 

借用概念と租税法

租税法は厳密に定義されているようで、用語の一部を他の法律体系から借用しております。

例えば、「住所」。
住所が日本の中にあれば居住者であり、国内の所得と国外の所得に課税されます(全課税所得)。
しかし、住所が国内になければ非居住者となり、国内源泉所得にのみ課税がされます。
大きな差となりますね。

これほど大きな差を生む定義ですが、租税法で直接は触れておりません。
借りています。

だから、借用概念という名前で、よく問題となります。

借用概念には「住所」のほか、「親族」「利益配当」「外国法人」などなど。
基本的な用語が他から取られていることは多いのです。

 

 

理論と実務の融合としての観点

租税は理論的な背景と実務をどのように融合させるかがとても大切です。
研究をする際や、研究計画書を作る上でも、この融合を上手にできるかが深みのある論点に触れるかに関わってきます。

また、理論的な背景だけを突き詰めても、実際に徴税ができない内容であれば絵空事。
実務や納税者にどのような影響を与えるかをしっかりと吟味した上で議論を進めていく必要があります。

様々な他の法律とも関わり合いが深い。
租税研究をする上では、他の分野との関係を研究していくことになります。
中里実先生が例示してくれている他分野との関わり合いを、まとめ直してこちらにも引用させていただきます。

 

一人事務所を大阪で営む税理士のブログ | 租税法の「課税要件」と「研究する際の融合分野俯瞰図」

 

こういった観点を持って、租税法の研究を行うと面白い分野に突っ込んでいけるでしょう。

 

まとめとして

今回は、課税要件をまとめました。

また、裁判でもよく問題となる借用概念。
そして、研究での融合分野についてもまとめとして触れていきました。

特に研究計画書を書くような場面にいる人も多いでしょう。
論点整理の参考に表を使って面白い議論ができるポイントを探すのに使ってみてください。

 

【編集後記】
確定申告終了しました。
ちょいちょい見直しに時間がかかりますね。

【運動記録】
ジョギングO ストレッチO 筋トレO サプリO

【昨日のはじめて】
チャイミルクドーナツ

【昨日の子育日記】
なんでも自分でしてみようという時期。
靴を脱いだり履いてみようとしたり。
それだけで、なにやらこっちも達成感を味わいます。

苦労がありつつも、こういった共感は成果を味わえる束の間の時間。
今日も楽しく過ごしました。

もくじ