租税法に詳しくなろうと学んでいる方にとって、知りたいことの一つは法律の背景です。

少し発展した内容を知りたい方に向けては、こちらの本がオススメです。

租税法を学んでいて知りたいことは、なぜこの方法で課税されるのか、課税されるようになったのはどうしてか、ということです。
でも、これら背景をしっかりと説明してくれることは多くありません。

租税法の内容自体でかなり広範囲に渡ってしまいます。
主要な判例や法律意図を少々開示するだけで、入門書は辞書ほどの厚さになります。

『租税法の潮流』は、初級を超えていきたいと考える方に、深めの背景や問題点を提示してくれる本です。

いくつか興味深い論点を取り上げてみます。

クレジット・デリバティブの例

平成9年の「クレジット・デリバティブの課税上の取扱い」の4つ目の論点において、「電子マネー」を取り扱っています。

比較的年数が経過している稿ではあるものの、興味を持ってその背景を考えたい方もいるのではないかなと。

クレジット・デリバティブとしてその他に取り上げられているものは、

  1. クレジット・リスクとデリバティブの関係
  2. 損害保険とデリバティブの関係
  3. 仕組み債

といった3つがあります。

これらへの共通の問題として、所得の種類を変えやすいことや、源泉地まで変えやすいことです。
また、その一部の所得を、債権取引部分は利子課税、それ以外の部分を信用取引や保証取引として課税できるかといった、部分分けの問題も出てきます。

未だに残っている問題であるともいえますし、他の分野においても類似の論点が出て来るようにも感じます。

 

確定決算主義の例

これらのように、確定決算主義について、その問題点を3つに分けて提示してくれています。

法人税法22条に関連した修士論文も未だに多いでしょうから、この分野の不確定性についての興味が大きいのかと感じるところです。

まとめられている問題点としては

  1. 法律によらない課税
  2. 保守主義の租税法への導入
  3. 逆基準性の問題

としてまとめられています。
ここまでは論文の論点でもよく出てくる基礎的なところかと推測します。

ここに、時価主義が台頭してくることが問題点として追加されています。
また、時価主義は連結納税においても影響が大きくなるでしょう。

一部の問題に対してアプローチすると、他の問題についても影響する例として面白い論点でした。

ちなみに、中里先生は、企業会計と法人税法との切り離しについても言及をしております。
気になれば、確認してもらうといいかなと。

 

日本の租税研究者の方向性の話

最後に、日本とアメリカの租税法学者の研究についての言及をご紹介します。

アメリカは実務家の層が広いので、日本の学者がやっているようなことをする一方で、本当の実務もしています。

日本の実務家は、どちらかといえば実務中心で、著書もQ&Aに近いようなものです。
しかし、これから日本の実務家は、学者のマーケットに入ってくるとおもっています。

では、そのとき、我々研究者は互角に張り合えるか

といった内容で、租税法研究者の話を展開しております。
こちらは平成17年の稿です。

ここに対しては、「できるだけ経済学の成果を取り入れた理論的な研究をしなさい」とのアドバイスをされていると書かれています。
なお、研究者レベルの話なので、院生レベルでこの方針の取組みをすると、否定されることがままあるかなとは感じます。

研究において、会社法的視点からのガバナンスを取り入れて研究をすることも述べています。

租税法の論文の帰着は、課税の公平性に反する、租税法律主義に反する、などが多いですよね。
結論の上にガバナンスへの視点を入れられるのは、もう一つ新しい方向性につなげられるのではないかなと。
(もちろん、租税法は厳密なので、きっちり行わないとかなりのツッコミを受けそうですが。)

 

いろいろな視点から見られる本でした。
論文執筆をされている院生の方は、もしご自身の対象領域が本書に載っていれば、読んでいただけると深みを加えられます。
そこそこに読むのに時間がかかるので、時間がない方はご注意ください。

 

 

【編集後記】
Wordpressのテーマの質問をサポートと行っています。
未だに直らないところがあるので、再質問の予定です。

【運動記録】
ストレッチ○ 筋トレ○ サプリ○

【子育て日記(4歳・0歳)】
虫取りの継続をしています。
虫取りだけでなくて、身体を動かす会のようになっていますが。
あと一ヶ月くらいしないと、虫が増えなさそうなので、ちょっと小休止して、それから一緒に探しに行こうかなと。